「うっ……」
肉塊に飲み込まれた人体のパーツは、半透明な肉塊の中で一瞬で潰されました。周囲に広がる濃い血臭。血のにおいにはなれているはずですが、他の異様な臭いとも混じって強烈な嘔吐感に襲われました。
……どうやら、消化しているようです。消化して、成長しています。していますが。
「……腐ってる……?溶けてるのか?」
みなみさんが呟きました。
ぶよぶよとした半透明の肉塊は、末端が泡立っていて、異様な色の液体を垂れ流しつつ縮んでいるのです。腐臭に近い、鼻が捥げそうな臭いがそこから発生しているようです。
悪臭から逃れるため、少し肉塊から距離を取ると、空間のゆがみがおさまっていきます。どうやら、あのゆがみもこの肉塊が原因のようです。
「……片付けるか」
「ですね」
「いーよ」
僕らは、武器を構えます。
それを待っていたかのように、肉塊の表面に浮かび上がった奇妙な印章が、強烈に輝きました。
***
「……自滅しやがった」
「お二人とも、無事ですか?」
「なんとか、な」
ほんの数瞬前。
僕らの目の前で、肉塊は爆発的な光を放って消滅しました。
その光が放たれたとほぼ同時に、僕らはそれぞれ左肩に強烈な衝撃をうけ、後方に吹っ飛ばされたのです。
あまりの衝撃に、意識を失いかけましたが、寸でのところで立直り……何とか起き上がりました。
「……う」
みなみさんが引きつったような声を漏らしました。
その視線は自分の左肩。防具の下に着込んでいた衣類が破れ、そこに焼印がありました。
焼印はみなみさんにだけあったのではありません。僕と遊羽の左肩にも、おなじものが刻まれていました。
「なんだ、これ」
焼印の形は、先ほどの肉塊表面に浮かび上がっていた、光の印章とおなじものでした。指で軽く触れ、触れた指先から全身にぞくりと広がる不気味な感覚に総毛立ちます。
「……呪い、喰らいましたね」
「だな」
どんな呪いなのか分かりませんが、なにやら厄介なものを貰ってしまったようです。
指し当たって、すぐに困るようなものではなさそうなのですが……。
「ま、ここで悩んでても始まらないでしょ。頭もばりばりだし、宿に帰って今日は休もうよ」
僕やみなみさんの、凍りついた表情もどこ吹く風、深刻そうな顔もせず、遊羽。
「……おまえって、前向きって言うか……」
「そんなに褒めないでよ」
「褒めてないよ」
「えー」
しかしまあ、遊羽の言うとおりここで考え込んでてもなにもはじまらないです。僕らは、重い体を引きずるようにしながら、坂道の上にある宿への岐路についたのでした。
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まったりと旅は続きます。
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