旅日記 2007/03/14

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2007/03/14  大海神祭 (セーレ)

 グローエスのグラジオラスにいる愛の無い攻撃・セーレです。
 大海神祭にきてます。

 お祭りなので、それはそれはすごい人です。
 屋台は出てるし、あっちこっちで芸人さんが芸を披露してたりするし、町は人だけじゃなく、亜人や妖精の類までいっぱいです。

「こりゃすごい祭りだなあ」
「海神祭のバージョンアップ版ですもんね。ものすごい騒ぎですね」

 遠くで、どーんと太鼓の音が聞こえます。
 遊羽の頭に貼り付いていたリトゥエが顔を上げ、それからふわりと空中に舞い上がりながら、懐から紙切れを一枚取り出しました。

「なに?それ」
「メモ書き。始礼の儀が終わったみたい」
 どうやら、大海神祭についてのメモのようです。用意周到です。
 リトゥエはメモに目を走らせ、なにやらぶつぶつ言っています。
「次は午前のメインイベントの海神招来の儀だね」
「海神招来?……なんか危なそうだなぁ」
 みなみさんが軽く首をかしげ、リトゥエに尋ねるともなく言うと、リトゥエはなんともなさそうな表情で答えました。
「海神様って言っても、都の術氏が海の概念を擬似的に具象化して、その出来具合で今年の運勢を占うとかそういう類のものだよ」
「ふーん」
「派手だから随分人気があるみたいだね。ネレイドが手伝うんだってさ」
 どこで聞いてきたのか、遊羽が口を挟みます。みなみさんはネレイド、という言葉に反応しました。
「ネレイドって……」
「海の妖精の類ですね」
 ふむ、とみなみさん。
 納得した……かもしれません。

 とにかくも、道の途中でボーっとしてても始まらないので、僕らは「マリーベルの道」と呼ばれる坂道を、町の中心の方に向かって歩き始めました。


***

 大海神祭メインイベントの海神招来の儀は、なにやらひどいことになってました。
 普段の年ならば、術師とネレイドが作り上げる概念の具象は、鳥だの魚だのの形を取るらしいのですが……今年は爆発しました。
 直径50メートルはあるような水の塊が、空中で爆発して、見物人がみんなびしょぬれになるって状態です。
 過去に例の無い結果に、国の人たちは大騒ぎです。
 まあ、現状……虹色の夜やら現出やらで大騒ぎな状態のグローエスですから、この占いみたいなのが正しくでるものならば、爆発してもおかしくは無いわけですね。
 リトゥエはさっき、海の精霊たちに話を聞くとかいいながら出かけていってしまったです。

 んで、すっかり服も乾いた深夜。
 服はごわごわだし、髪なんか手ぐしも通らない悲惨な状態ですが、致し方ありません。夜になって上がっていた花火も頭の昔に終わり、祭りの余韻を残す酔っ払いたちが、ふらつきながら帰路につくのを眺めながら、僕らは海岸を目指し、歩いていました。
 気になるものを見つけたのです。
 南海のほうで、花火が上がっているときにちらりと見えた奇妙な光。気になって仕方なくて、僕らはそれを確かめるべく、こんな夜中に海辺に向かっているのです。

「なんでもなけりゃそれはそれで詰まらんがな」
 みなみさんが真っ暗な海を眺めながら言います。
「そうなんですけどね、なんか気になりますよ」
「それが命取りになることもあるからね、気をつけなよ」
 遊羽はなにも考えてなさそうな顔をしながら、一瞬どきりとするような事を言いました。
「わかってるよ」
 僕は、ポツリと答えてました。遊羽が薄く笑った気がしました。

 しばらくうろついていましたが、特になにもなく、そろそろ宿に帰ろうかと思い始めた頃に、変化は起こりました。
 海岸線のある一点が「ぐにゃり」と歪んだのです。空間ごと、捻じ曲げられたように。
「……なんだ?」
「行って見ましょう」
 一瞬の沈黙のあと、僕らは半ば駆け足で、ゆがみの見えた方向に向かいました。

 ゆがみが見えたのは、前方の岩陰。あと数メートル程度まで近づいたとき。
 ぐにゃり
 唐突に世界が揺らぎました
 渦潮の中に放り込まれたみたいに、視界はぐるぐる、上下感覚が狂い、まともに立っていられない状態になり、僕はその場にひざをつきます。みなみさん・遊羽は倒れずに立ってはいますが、夜目にも分かるほど膝が笑っています。
「拙いな、おい」
 焦りの色が濃いみなみさんの声。
「とりあえず、逃げたほうがいいよね」
 遊羽の声にも、珍しく焦りの色。
 結構な事態です。

 何とか立ち上がり、その場を離れようとしたそのときでした。
 岩陰から、ずるり……と、何かが這い出したのです。
 満月に近い、夜空に輝く月の光に照らされたそれ。
 赤とも青ともつかない半透明の肉塊。
 そこから飛び出ている、人のものと思われる脚や腕。それが肉塊にゆっくりと取り込まれていきます。

 ぶしゅり


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まったりと旅は続きます。


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