2005/11/14 『僕はペット・10』

 世にも奇妙な追い掛けっこを繰り広げたセレとみなみ酒店。
 酒場に戻ってきた彼等を待っていたのは、セレを買い取ると主張する人物でした。
 果たしてセレは売られてしまうのか!?


 『可愛い魔術士〜 売られてゆーくーよ〜 哀しそうな瞳でみーてーいーるーよ〜』
 淋しげな歌声が酒場に虚ろに響きます。セレです。思わずのけぞるメンバー達。
 ギャラリーもどよめき、発端の少女も異様な雰囲気に戸惑い気味です。
 『どなどなどーなどーな〜』
 ますます高ぶった様子のセレ。
 何やらわけのわからない振り付けで踊りながらも、視線はメンバーを見据えています。
「うわ〜、ずっとこっちみてるっス。 しかもめちゃくちゃ恨めしそうっス。」
 マウス君が引き攣り気味の笑顔でコメントしました。
「でも、あの振り付けは『喜び系』じゃないか?」
 みなみ酒店が首を傾げます。
「真意は本人に聞いてみるがよかろう。」
 歳三が落ち着いた口調で語ります。でも、俺もわからん、みたいな表情に見える気がします。
 一通り踊って落ち着いたのか、静かになったセレ。余韻に浸っているようにも見えます。 (もしや満足しているのか!? 今の出し物に!?) そう思いながらも口には出せないみなみ酒店でした。
「ちょっとあんたたち! わたしのでばんはどうしてくれるわけ!?」
 ちいさな女の子が我に返ったように叫びました。
 辺りの視線が集中してどよめきが起きます。女の子はク・リクルリクルという小さな小さな種族だったのです。
「このプリティ&キュートのすごうでしょうにんの…、もがっ!」
「お嬢様! 名乗っちゃマズいです!」
「版権やフラグ管理など様々な問題が…。」
「いちいちうるさいわねっ! はいしんがおわったいま、わたしをはばむものなんてないんだからっ!」
 従者らしき者達が女の子を宥めますが、あまり効果はないみたいです。 周囲のギャラリーもリアクションに困っています。
「とにかくっ! ちゃんといちまんもってきたんだから、そのうたっておどれるまじゅつしはわたしのものよっ!」
 女の子が叫びました。
「ふぇっ!いちまん!?」
 セレは驚きました。
「通用するのかよっ!? あの踊り!」
 みなみ酒店は吠えました。 万感の想いがこもっていました。
 「それはそれとして。」
 あっさりと流れをそらす歳三。 かなりの高等テクニックです。
「何故、買い取り価格一万なんだ?」
 首を傾げながら女の子に尋ねます。
「そこは気になってたとこっス。」
 マウス君も疑問だったようです。
 「解説しよう! 『セレ』だから『せん』と『れい』を足してみたのだ! それで一万! 我ながら説得力とお得感を両立させた素晴らしい価格設定といえよう!」
 みなみ酒店が胸を張りながら、高らかに語りました。
「あきらかにネタっスね…。」
「みなみも買い手が現れるとは思ってなかったろうな。」
 そこには高らかに笑い続けるみなみ酒店を、冷ややかに見つめる二人がいました。
「ちょっと待って下さい! 僕の価値って一万ぽっちなんですか?」
 悲しみのこもったセレの声がしました。 こだわるところはそこでは無い気がしますが、彼には大事な点らしいです。 「何を言う! 一万あればどれだけうまい酒が飲めるかわからんお前でもあるまい。」 「た、確かに…。 それはわかるですが…。」 あっさりと気勢を削がれるセレ。 そこは納得する部分では無い気がしますが、彼にとってはかなりの説得力を持つようです。
「はい、そこのケダモノ! わたしのペットとなれなれしくしないっ! もうオーナーはわたしなんだからっ!」
 小さな女の子がすかさずツッコミました。段々慣れて来たみたいです。
「ケ、ケダモノだって…?」
 みなみ酒店が呆然と呟きました。 彼は黙ってさえいればかなりの好男子であると近所の有閑マダムにも噂されているくらいですから、こんな風に呼ばれる事はまず無いのでしょう。
「小さなお嬢さん。」
 みなみ酒店が女の子ににじり寄ります。
「な、なによ…。 これいじょうちかよるとおおごえだすわよっ!」
「スバラシイ! もっと言ってくれっ!」
「ぎゃ〜っ!」
 大声どころか、絶叫が上がりました。 みなみ酒店は名誉を傷付けられて怒ったわけではなく、喜んでいるみたいです。 メンバーも理解に苦しむ顔をしています。
 小さな女の子は満面に喜色を浮かべてにじり寄るみなみ酒店に苦しんでいます。 もともと収拾のつかない雰囲気でしたが、ますます拍車がかかった感じです。
「ぎゃ〜! ちからないで〜!」
「みなみ、そろそろロリコンは卒業しろ。」
 小さな女の子の窮状を見かねた歳三が、みなみ酒店を制止します。
「そろそろもなにも、はじめからロリコンではないんですが。 ワタクシ。」
 やはり気勢を削がれたようなみなみ酒店。 とりあえず、場は沈静化したようです。
「お嬢さん、コイツに値段を付けたのはこの男のミスだ。 買い取りはキャンセルしてもらえないだろうか?」
 歳三が落ち着いた口調で小さな女の子に告げました。 (こんなに発言の多い歳さんははじめてかもしれないっス…。) マウス君は驚きで一杯です。
「え〜!? せっかくはるばるきたのに〜!」
 小さな女の子は不満で一杯です。
「確かに、それは虫が良すぎるか…。」
 歳三は呟きました。
「では、コイツを景品にして試合をしよう。 オレ達が勝ったら、コイツの買い取りはキャンセル、そちらが勝ったら、コイツに一万を添えて進呈しよう? どうだろうか?」
 歳三がセレの頭に掌を乗せながら、提案しました。 小さな女の子だけでなく、酒場が騒然としています。
「えぇ〜! 僕は景品になっちゃうですか!?」
 思わず叫んでしまうセレ。 果たして彼の運命は!?

まったりと旅は続きます。


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サイドストーリーず!
Ver.1.00
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