2005/04/21 『僕はペット・7』

 みなみ酒店を探している途中で、黒猫につられて迷子になってしまったセレ。 通信機のバッテリ切れに対してセレの取った方法は、夜空に向けての魔法の乱射でした。 歳三が発射地点を特定することで、セレは救出される事になったのですが…。

 「ふぎゃ〜!」 酒場にセレの悲鳴が響きます。 何故か、場内が静まり返りました。 歳三のぐりぐり攻撃が炸裂したのです。 お仕置き、ともいいますが。 セレは手をバタバタさせています。 おそらくは…、痛みに耐えているのでしょう。 喜んでいるわけではなく。
 「まだまだ〜。 くらえっ! 恐怖の合体攻撃っ!」 涙目になったセレに、みなみ酒店の雄叫びが聞こえました。 ぐりぐり攻撃を繰り出している歳三は、セレの正面です。 伸びて来た手は、後ろから。 視界ギリギリに見える手に、嫌な予感がします。

 むにっ。

 「ひょあぁ〜!」 場内に壮絶な悲鳴が響きます。 さっきよりも間が抜けているように聞こえるのは、気のせいです。 たぶん。 今回のむにむには、後ろからほっぺをつまむようなバージョンです。 屈辱度五割増し(当人比)です。
 傍観していたマウス君も、なかなか笑いを止められません。
 「まぁ、そろそろゆるしてあげた方がいいっス。 セレさん、涙目になってるっス。」 意思の力を総動員してシリアス顔になったマウス君が言ったっス。



 すいません…。 うつってしまいました。



 マウス君の提案を聞くと、歳三はすぐに技を解除しました。 すぐにやめてあげるつもりだったのですが、後から加わったみなみ酒店があまりに嬉しそうだったのでタイミングを逃してしまっていたのです。
 セレは、救いの時が来たのを知りました。 でも、ほっぺの手はまだ離れません。 「♪たてたてよこよこ…」 おもむろに歌い出すみなみ酒店。 リズムを取るように、セレのほっぺが引っ張られます。 その動き、縦横無尽。 セレの背筋を戦慄が走り抜けます。 「♪まーるかいて、ちょん!」 「〜!!」 声にならない絶叫と共に、崩れ落ちるセレ。 「ふっ…。 決まったな。」 それを見下ろしながら、悠然と呟くみなみ酒店。 満足したみたいです。
 「セレよ、迷子になるのはある意味仕方がない。 しかし、街中で強力な魔法を立て続けに放つのは避けろ。 冒険で糧を得る者への風当たりが強くなるからな。」 歳三が静かに語りました。 先程までメンバー全員は、街の警備係からありがたいお小言を頂いていたのです。 「他の冒険者の風評を汚す真似は、お前の望むところではなかろう。 頼むぞ、セレ。」 言う事を言ってしまえば、いつもの穏やかな歳三です。 セレは大きく頷きました。
 「トシにしては、珍しく長い台詞だったな。 マジメな話も終わったし、呑むか?」 酒瓶を掲げながら、爽やかに笑うみなみ酒店。 「どれだけ呑むつもりっスか? みなみさん…。」 マウス君が思わずツッコミます。 隣で歳三が頷いたので効果は半減ですが…。
 「呑むか。 セレ、お前も来い。」 歳三の呼び掛けに、崩れ落ちたままだったセレが立ち上がりました。 おそるべし、酒の力。 しかし、セレは忘れていました。 ほっぺが真っ赤になっていることに。 次の瞬間、三人分の笑い事が響きました。 最初は憮然とした表情のセレでしたが、やっぱり笑ってしまいました。 和やかに酒盛りが始まります。
 程よくお酒が回った頃。 「僕は、決めたです!」 いきなり、セレが宣言しました。 「みなみさんにしっかりついて行って見せるです! 家出扱いになんてさせないです!」 決意に満ちた眼差しです。
 「まずは、本を封印です。 おやつの時間も減らすです。」 発言と共に、蔵書に紐をかけます。 勿論、本が傷まないように包装紙を使うのも忘れません。 少し危なっかしい手つきで結束していきます。 意外に本気なセレに、一堂もビックリです。
 「そうかそうか。 分かった、セレ。 オレも手伝ってやるぞ〜。」 「ああっ! みなみさん、そんなに団子結びばっかりしたら、解けなくなっちゃいますよ〜。」 楽しそうなみなみ酒店と、戸惑い気味のセレ。 紐を巡る攻防で、二人は大騒ぎです。
 「どんなに固く結んでもヒモ切っちゃえば関係ないのに、二人とも気付いてないみたいっスね…。」 「全くだな…。」 マウス君と歳三は、二人には教えないようにしようとアイコンタクトでこっそりと決めました。
 「なかなかの量だな。 紐が無くなるかと思ったぞ。」 セレの蔵書の量に驚きつつも、一仕事終えて満足気ななみなみ酒店。 「無駄で無意味な結び方を他用するからですよ…。」 そんなセレの指摘もどこ吹く風です。
 「そうかそうか。 どこでも付いてくるか…。」 セレの頭に手を置くと、朗らかに笑うみなみ酒店。
しかし、瞳の奥に垣間見えるのは悪戯心のようです。 「スピードに差があるから、走らないでおいてやる。 しかし、お前は付いて来れなくなるぞ!」 不敵に笑うみなみ酒店。 「うをを〜! 負けないです!」 セレも追い掛ける気満々のようです。
 「なにやら無意味に燃えてるっスね…。」 「早い話が鬼ごっこだな。」 囁き会う、マウス君と歳三。 どうやら、明日は追い掛けっこになりそうです。 果たしてどんな一日になるのでしょうか?

まったりと旅は続きます。


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サイドストーリーず!
Ver.1.00
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