2005/02/17 『僕はペット・6』
みなみ酒店を探すつもりが、猫に惑わされて迷子になったセレ。 しかし、これくらいでオロオロするセレではありません。 彼は迷子になる事に慣れています。 慣れ切っているのです。 いわば、迷子のプロフッショナルなのでした。
「こういうときは、連絡です!」 迅速に、しかし少々怯えながら通信機を操作するセレ。 迎えに来て貰えば、おそらく怒られるでしょう。 でも、彼は知り尽くしていたのです。 迷ってしまったら、自力での帰還は無理だと。
「どこをうろついているんだ、セレ。」 呼び出し音すらさせる事なく、歳三の声が応えました。 「トシさんたちを待っていたら、猫が横切ったです。 そして、意味ありげに僕を挑発したのです。 それで追い掛けたら、逃げたので路地を右に左に、更に壁越えまでしなければならない事態になってしまったのです。」 セレは自身の窮状を懸命に語りました。 きっと伝わったはずです。
「つまり…。」 歳三の静かな声が続きます。 わかってくれたみたいです。 さすがトシさん! セレは安心しました。
「お前は俺達に用事を任せる間に猫と戯れ、しかも迷子になったのだな?」 「あうっ!」 セレは凍り付きました。 歳三の声は、底冷えするようなキレだったのです。 トシさん、怒ってる…? セレは恐怖しました。
「あうあうあう〜。 待って下さい! きっとトシさんだって、猫さんに会ったら時間を忘れてしまうです。 逃げたら追い掛けちゃうです。 だって、猫ですよ!?」 セレは懸命に自信の正当性を主張しました。 言い訳、とも言えます。 しかし、本人は大まじめです。
「そうだな。 俺も確かに猫がいたら可愛がるかもしれん。 退屈そうにしていたら、構ってやるだろう。 しかし、仲間を忘れて追い掛けたり、迷子になったりはしないな。」 きゃ〜。 セレのコメントは通用しませんでした。 ぷるぷると震えながら、セレはぐりぐりの刑を覚悟しました。
「事情はわかった。 話は後回しだ。 セレ、どこにいる?」 歳三の発言で、追求は後回しになりました。 「わかんないです。 迷子ですから。」 何故かどこか誇らしげなセレ。 何故かは、永遠の謎です。 「…。 周囲に目印は無いか? お前の足は、遅い。 近くにいるはずだ。」 溜息の気配の後、歳三は訪ねました。 慣れた対応です。 しかも、聞き捨てならないコトをさらりと言われた気がします。
ぴ〜っ! その時、電子音が聞こえました。 嫌な予感がします。 「トシさん、バッテリがまずいです! ピンチです!」 「セレ、目立つものを教えろ!」 さすがにふたりとも真剣モードです。 しかし、無情にもバッテリは切れました。 ピンチなのは通信機ではなくて、セレなのでした。
その後セレは、しばらく通信機を眺めていました。 頭の中を色々な計算と打算が駆け巡っているのかもしれません。 「ふふっ…。」 小さな笑いがもれました。 覚悟を決めたような表情です。 「目印が無いなら、創るです!」
そして、街の住人は天に向けて放たれる雷光や火球を目撃することになるのでした。 仕掛人たる小柄な魔導師は、高笑いしながら延々と魔法を放っていたそうです。 何故か泣いていたようだ、というコメントも寄せられたようです。
そして、仲間が駆け付けるまで、マジックショーは続いたのでした。 街の子供達に希望と想い出を残しつつ…。
セレは、無事に救出されるでしょうか?
まったりと旅は続きます。
サイドストーリーず!
Ver.1.00
(c)Seleste