2004/11/29 『僕はペット・4』

「トシさん、なんで僕だけダメなんですか? みなさんに素材を集めて貰って創った防具なんですよ。 僕たちの努力の結晶なんです。 何か理由があるんですか?」 セレは気持ちを落ち着けようと心掛けながらも、歳三に問い掛けました。
 「ああ。 理由はある。 セレ、武装しているペットを見たことはあるか?」 「!? な、ないです…。」 セレは戸惑いながらも答えました。 「だろうな。 それが主な理由だ。 ペットが攻撃を受けることは殆ど無いから、武具は必要ない。」 「何故かというとだな、ペットを攻撃すると、動物愛護団体からクレームがつくからだ。 」 歳三の言葉の後に、得意そうに続けるみなみ酒店。
 「戯れ事は気にするな。 魔器については交渉中だが、期待はしないでくれ。」 「そういうことなら…、我慢するです。 色々大変なんですね。」 歳三に無視されて寂しそうなみなみ酒店を眺めながらも、健気に答えるセレでした。
 一行は、街を出て亜獣退治をすることにしました。 街を出てしばらくすると、街道の向こうには亜獣の影が。 早速実戦です。
 「よ〜し、セレ! 試しにやってみろ!」 「はいです〜!」 メンバーの中ではスピードのあるみなみ酒店が先手を取って、セレに合図しました。 意気揚々と準備をするセレ。
 流石に歴戦の戦士達です。 準備をするセレの傍らで、歳三とマウス君が、あっさりと亜獣を葬り去りました。 「ラストは任せたぞ、セレ。」 「お任せするっス。」 二人もセレの動向に注目しています。
 呪文の構成を次々に紡ぐセレ。 しかし、彼は魔力を高めることに全てを捧げて来た魔法使いです。 スピードはあまりありません。 どうやら生き残りの亜獣に、先手を取られてしまいそうです。
 「ああっ、もうっ! くらえっ! みなみデルタ!」 鞘から放たれた白刃は、三度弧を描きました。 みなみ酒店は、自分に襲い掛かる亜獣を思わず切り捨ててしまったのです。 当然、敵は全滅です。
 「あ〜、もうすぐで呪文が完成したです〜。」 呪文を中断したセレは、ちょっぴし寂しそうです。 涙目になっています。 「わはは! セレよ! 遅いっ、遅すぎるっ!」 みなみ酒店は戦士の習性で思わず手を出してしまいましたが、気まずいのでいつものノリで叫んでしまいました。
 「ふぇ〜、そんなこと言ったって、ムリです〜。」 ますますがっかりするセレ。 「スピードがありすぎるのも罪だな。 自分の速さがコワイぜ。」 ますます調子に乗るみなみ酒店。 しかし、その時に異変は起きたのでした。
 「はっ…、はや…。」 「どうした、みなみ。」  「しっかりするっス!」 顔を覆っているみなみ酒店に、歳三とマウス君が駆け寄ります。 「みなみさん…?」 セレもビックリしています。
 「はやいって言わすな〜!! うわ〜ん。」 顔を覆ったまま、駆け出していくみなみ酒店。 異様なスピードで、あっさりと彼等の目前から消え去りました。
 「自爆だな。」 「そうっスね。」 「何処へ行ったんだろうな。」 「わかんないっス。 夕日っスかね?」 何処か呆然とした表情で言葉を交わす、歳三とマウス君。 セレはオロオロしています。
 「ところでセレ。」 「はい。」 「みなみを探さなくていいのか?」 歳三の問い掛けに目をぱちくりしました。 「え!? 何でです?」 「お前…、家出したことになってるぞ。」 「えええ〜っ!!!」 セレは思わず絶叫しました。
 「どうやら、みなみさんから離れ過ぎると家出扱いになるみたいっスね。」 「成る程。 確かにみなみから攻撃命令が出ても実行できんな。」 どこか解説的な響きのコメントを聞きながら、セレは思うのでした。 「う〜。 なんかペットって色々と大変です…。」 思わず溜息もついちゃいます。
 果たしてセレはペットとしての役割を果たすことが出来るのか!?}

#{2004/12/30
『僕はペット・5』

 ネタで自滅したコトを恥じ、逃走したみなみ酒店。 そして、セレは飼い主と離れると家出扱いになるコトを知ったのでした。
 次々に明かされるペットルールに呆然とするセレ。 彼はペットとはお気楽なものだと羨んでいたのですが、ペットにはペットなりの苦労があるみたいです。。
 「ふぇ〜、なかなかたいへんです…。」 思わず、小さく溜息。
 「セレ、みなみを追わなくていいのか?」 そんなセレに、歳三が冷静に尋ねます。 セレは答えました。 「でも…、みなみさんは足が速いから、僕では追いつけないです。」 「確かにそうっスね。 しかも、迷子になるかもしれないっス。」 マウス君の言葉には、歳三もセレも頷くしかありませんでした。
 「となれば…、行き着く所は呑みしかなかろう。」 「確かにそうっスね。 みなみさんは『呑み・戦闘・ギャグ』が活動時間のほとんどを占めているっス。」 歳三の発言に、マウス君も頷きます。
 「わ〜い、酒場巡りですね♪ 新しい行きつけの店や銘酒に出会えるかもです〜。」 ピョンピョンと跳ねながら、喜びを満身で表現するセレ。 みなみ酒店の事を忘れているのでは? と、二人は思うのでした。
 こうして、街道沿いで今後の対応を考えていた三人は、街中の酒場を目指して移動を始めました。
 セレも二人の後を時折小走りになりながら、頑張って付いていきます。
 「あ、ネコだ〜♪」 セレが野良猫に目を留めたのは、行きつけの酒場を2軒程廻った時でした。 歳三とマウス君が、3軒目でみなみ酒店について聞き込みをしている所です。
 猫は一瞬だけセレを眺めると、ふい、と顔を背けて遠ざかっていきます。
 「あ、まて〜♪」 路地裏に消えていく猫を、つい追い掛けだしたセレ。 彼は猫が大好きなのです。  「うふふ…。 追い付いたです〜。」 猫を袋小路に追い込んだセレ。 彼はとても集中力があります。 大好きな本を読んでいると、時間を忘れるくらいです。 その集中力で猫の動きを先読みしたのです。
 「うをを〜!」 袋小路のカベを乗り越えるつもりの猫に、必死で飛び付きます。 どこか間の抜けた雄叫びですが、本人は真剣そのものです。
 「ふぅ…。 捕まえたです〜。」 あちこちに擦り傷を作りながらも、満足気なセレ。 猫アレルギーなくせに、至福の表情です。 少し恍惚としてます。
 猫を抱きしめながらくしゃみを連発し、涙を溢れさせて満面の笑みを浮かべる様はかなり異様なのですが、誰かが見ているわけでもありませんし、人目を気にする少年ではありません。
 「う〜、しみる〜。 でも…、これが愛なのです!」 体質に恵まれなくても、好きなものは好きなのです。 「分かってくれますよね? トシさん!」 そこで我に返るセレ。 「あれ? マウス君?」 イヤな汗が頬を伝います。
 力の抜けた腕から猫は脱出を果たしましたが、それにも気付かないくらいです。 「ここ、どこだろう? どうしよう…。」
 セレはとても集中力があります。 猫を追い掛けている時は、仲間の動向を忘れてしまうくらいです。
 こうして、セレは家で中の身でありながら、更に迷子になってしまったのでした。
 セレは、仲間と合流できるのか!?

まったりと旅は続きます。


前:2004/11/18
次:2004/12/30

サイドストーリーず!
Ver.1.00
(c)Seleste